机上検証でコストやリスクを把握し、
緻密な計画立案を経て安全かつ効率的に
地図APIサービスをAWSに移行集約

インクリメントP株式会社(現:ジオテクノロジーズ株式会社)

位置情報ソリューション事業本部 C&E事業部 サービス開発グループ マネージャー 立里英志朗 様
同グループ プロジェクトリーダー 山脇敦 様、同グループ プロジェクトメンバー 守國拓史 様
インクリメントP株式会社(現:ジオテクノロジーズ株式会社)
公開日:2021年8月12日
BEFORE
  • 地図APIサービスのAWS移行において、コストやリスクが不安
  • 各種サービスをAWSに集約し、運用の効率化を図りたい
  • 移行時のダウンタイムはゼロにしたい
AFTER
  • 机上検証、技術検証&移行計画、移行実施の3ステップで安全かつ確実にAWSへ移行
  • 地図APIのAWS移行でサーバーコストを含めた運用コスト50%以下を達成
  • 専用の移行ツールの活用でダウンタイムゼロを実現

1994年に創業し、カーナビ用のデジタル地図事業をスタート、日本全国の地図整備からサービス提供まで一貫して手掛けるインクリメントP株式会社(2022年1月に社名変更。現:ジオテクノロジーズ株式会社)。「デジタル地図」を提供する会社として、カーナビ向けの地図データや地図更新ソフト開発のほか、「MapFan」ブランドで個人から法人向けまで、多様な地図サービスを展開しています。最近では、2020年10月に正式公開した移動するだけでマイルが貯まるポイ活アプリ「トリマ」が人気を集め、2021年7月時点で300万ダウンロードを突破しています。

各種サービスの基盤にアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用している同社ですが、法人向けの地図APIサービス「MapFan API」はMicrosoft Azure(以下、Azure)上で稼働していました。開発や運用の効率上、AWSへの集約が得策と判断した同社は、移行前の検証から移行実施までを支援するクラスメソッドの「AWS技術コンサルティングサービス」を採用。コストやリスクを洗い出したうえで移行計画を策定し、クラスメソッドのグループ会社であるネクストモードを加えた3社体制で移行プロジェクトを推進しました。検証から移行までの経緯について、位置情報ソリューション事業本部 C&E事業部 サービス開発グループの立里英志朗さん、山脇敦さん、守國拓史さんにうかがいました。

地図APIサービスの基盤をAzureからAWSへ

コンテンツビジネス、地図ソリューションビジネス、ナビゲーションビジネスの3つを軸とするインクリメントPでは、2013年頃からサービス基盤としてAWSの利用を開始し、徐々に利用範囲を拡大しています。ところが法人向けの地図APIサービス「MapFan API」は他社クラウドを乗り換えながら運用を続けてきた経緯があり、2020年8月の時点ではAzure上で稼働していました。MapFan APIは、同社の位置情報データを使って、地図表示/ルート探索/検索などの機能を実装できる開発ツールです。現在、公益法人からベンチャー企業まで幅広く利用されており、1日で数千万のアクセス数があります。

[参考:MapFan APIを利用したシステム構成例]
インクリメントP株式会社オフィシャルサイトから引用。

インクリメントP株式会社(現:ジオテクノロジーズ株式会社)

しかし、他のサービスがAWSを採用している中、MapFan APIのみがAzureであることは効率が悪く、運用の足かせになっていました。「本来は、Azure上に大規模な位置情報基盤を構築する構想がありましたが、より柔軟な運用が可能なAWSでのサービス集約に方向転換したため、Azure上での構築は行わないこととなりました。その結果、MapFan APIはそのままAzure上で運用し続けてきた経緯があります。しばらくはAzure上で運用してきましたが、運用・ナレッジを集約するならAWSに統一するべきと判断し、移行を検討しました」とマネジメントを担当する立里さんは語ります。

システム面でも既存のAzure環境は、構築・運用を外部のベンダーに委託していたため、ブラックボックス化が進んでいました。プロジェクトリーダーを務めた山脇さんは「自社でコスト改善をしたり、インフラ環境を改善したりしたいと思っても中身がわからないため手が出せませんでした。そこで、慣れたAWSを使って自社で環境を再構築するべきという判断に至りました」と説明します。

最も信頼できるパートナーとしてクラスメソッドを採用

API基盤のAWS移行を決断した同社ですが、移行にはリスクが伴い、かかるコストもわかりません。そこで同社は移行の可否を判断することが必要と考え、そのパートナーにクラスメソッドを指名しました。

「移行してもコストに見合わなければAzureを継続するという考えのもと、まずはリスク要因と検証項目を洗い出し、全体のコストを算出することにしました。クラスメソッドには、以前からAWS請求代行サービスをお願いしていた経緯や、過去にもAWSへの移行プロジェクトをお手伝いいただいた実績もあり、今回も声をかけました」(立里さん)

クラウドサービスの移行において同社が最も懸念したことは、顧客向けのサービスだけに、既存の仕様を変えることなく、無停止で移行することでした。そのためには、従来と同等以上の性能、品質、安定性、可用性、セキュリティーが確保できることを確認し、規模感、難易度、工数を正確に見積もらなければなりません。

「経営層に対して、これらを正しく報告しなければ、移行のゴーサインは出てきません。そこで最も信頼できるパートナーとしてクラスメソッドを採用しました。また、プロジェクトチームにインフラに強いメンバーがいなかったこともあり、移行段階での協力も期待していました」(山脇さん)

移行時の障害ゼロ、顧客クレームゼロ、ダウンタイムゼロを達成

プロジェクトは、2020年8月に机上検証でリスクやコストを洗い出し、移行の可否を判断する「Phase.1」から開始しました。経営サイドからゴーサインが出た後、同年10月から12月にかけて技術課題を検証し、移行計画を精緻化する「Phase.2」を実施。その後、クラスメソッドとの契約を継続し、2021年2月から本番システムの移行する「Phase.3」へと進み、同年6月にAWSへ切り替えています。

同社として最も注力したのは、Phase.2の技術検証・移行計画の策定です。AzureからAWSへの具体的な移行方法、移行後の動作確認、ダウンタイムなしで切り替える方法などをクラスメソッドとともに検討しました。

インクリメントP株式会社(現:ジオテクノロジーズ株式会社)

「クラスメソッドから、AWS専用の移行ツール(CloudEndure)を使った方法を提案され、結果として既存の動作を変えることなく移行できることがわかりました。環境をゼロから構築し直して、アプリケーションやデータを移行する手法では、動作確認に時間がかかり、OSやライブラリーのバージョンが変わることで仕様にも影響を与える可能性があります。その点、仮想サーバーをOSやライブラリーごと移行できるCloudEndureを提案された時は衝撃的でした」(山脇さん)

PoCでは移行後のシステム性能やデータの同期なども確認。DNSの切り替えによりダウンタイムゼロで移行できることも確認したうえで、Phase.3へと進みました。同社は今回、アプリケーションやミドルウェアを改修することなく、インフラのみをAWSに移行する方針を取っています。
Phase.3の本番移行では、最初に影響の少ない個人向けサービスの本番環境、次に法人向けAPIサービスのテスト環境、最後に規模の大きい法人向けAPIサービスの本番環境と、DNSの切り替えを3段階に分けてユーザーへ与える影響リスクを最小化しています。

「AzureからAWSのサービスに切り替わることで振る舞いが変わってしまう可能性もあり、不安がありました。しかし、第1段階の切り替えで移行手順や負荷を確認できたことで、第3段階のメインサービスの移行はスムーズにいきました」(山脇さん)

インフラ移行後のDNS周りやネットワーク系のコンフィグ設定は、同社が自社で実施し、踏み台サーバーも構築しています。

Phase.1からPhase.3までのプロジェクトは、当初の計画どおりに進みました。2021年6月に本番移行を終えた時点でAzureの契約を終了してAWSに一本化しています。プロジェクト期間のほとんどは新型コロナウイルス感染症対策のため、フルリモートでの対応となりましたが、プロジェクト管理ツールやSlack等を活用することで大きな支障もなく進みました。クラスメソッドとネクストモードの支援に対して、山脇さんは次のように評価しています。

「依頼した要件に100%満足のいくアウトプットを出していただき、移行時の障害ゼロ、顧客クレームゼロ、ダウンタイムゼロを達成することができました。クラスメソッドとネクストモードは私たちが依頼したことをそのままこなすのではなく、最善の方法を一緒に考えてくれました。プロジェクト中、技術的な壁に当たった時には技術ブログのDevelopersIOにも助けられました」

サーバーコストを含めた運用コスト50%以下を達成

AzureからAWSへ移行したMapFan APIの基盤は、現在50台弱の仮想サーバー(Amazon EC2)と、データベースのAmazon RDSで構成しています。ロードバランサーのALBの前にはAWS Global Acceleratorを配置して可用性とパフォーマンスを改善し、IPアドレスを固定化しています。ファイルシステムにはマネージド型のAmazon EFSを新たに採用し、急増するデータ量にも対応ができるようにしました。

AWSへの移行により、サーバーコストを含んだ運用コストを50%以下と、期待どおりのコスト削減が実現しています。

「インスタンスサイズを拡張したうえでのコスト削減なので、期待以上の効果です。移行費用も見積もりより安く、コストパフォーマンスのいいプロジェクトになりました。今後、夜間帯はAmazon EC2を落としたり、AWSのリザーブドインスタンスやSavings Plans等の割引プランを利用したりしながらさらなるコスト削減を進めていきます」(山脇さん)

クラウドネイティブなアーキテクチャへの「シフト」を加速

今後はシステムの運用面を改善し、地図データや検索データの更新をより早く、効率的に実施していくことを検討しています。また、Amazon CloudWatchを活用した監視レベルの向上や障害の早期検知、AWS WAFを用いたセキュリティーの強化などを進めていく予定です。守國さんは「TerraformやAWS CloudFormationを使ってインフラをコード化し、構築や運用を自動化していきたいと思います」と語っています。

一方で、今回のプロジェクトはAzureの環境をそのままAWSに「リフト」しただけに過ぎません。そこで、よりクラウドネイティブなアーキテクチャに向けて改善を続けていくといいます。山脇さんは「ようやくブラックボックス化が解消できたので、AWSの機能や最新技術を取り入れながらシステムを最適化していきます」と語ります。

株主の変更で2021年より新たな体制で動き始めたインクリメントP。開発体制も強化され、新たなビジネス展開も開始しています。今後、クラウドの活用はより拡大していくことから、クラスメソッドにかける期待も大きく、立里さんは「人的リソースを開発などのクリエイティブな領域に集中させるため、インフラの管理・運用面での支援と、AWSの新技術を活用するための情報提供を期待しています」と語ってくれました。クラスメソッドは同社がサービス開発に集中できるよう、各種サービスを通して支援を継続していきます。

この事例はAWS総合支援サービスをご利用いただいています

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